アルカンターラを採用した車内内装(シートとドアトリム)

アルカンターラとは|本革・スエードとの違いと手入れ

アルカンターラとは、イタリアのアルカンターラ社がつくるポリエステル68%・ポリウレタン32%の人工素材です。ただしスエード調の見た目でも本革ではなく、「アルカンターラ」は同社の登録商標で、天然皮革のスエードとも一般的な合成皮革とも構造が異なります。この記事では、素材の正体、本革・スエードとの違い、採用車種の傾向、手入れ、毛羽立ち・テカリの原因を公式情報にもとづいて解説します。

急いでいる人は「アルカンターラの手入れ」の見出しだけ読めば、今日やることが分かります。

この記事のポイント

  • ① ポリエステル68%・ポリウレタン32%の人工素材でアルカンターラ社の登録商標。動物の革ではない
  • ② 手入れの基本は「柔らかいブラシ」と「40℃程度のぬるま湯で固く絞った布」。強くこすらない・溶剤を使わない
  • ③ 毛羽立ちとテカリの主因は摩擦と皮脂。皮脂が固まる前ならぬるま湯拭き+ブラッシングで戻ることがある

アルカンターラとは

アルカンターラ(Alcantara®)は、イタリアの Alcantara S.p.A.(アルカンターラ社)が製造・販売するスエード調の人工素材で、公式サイトによれば組成はポリエステル68%・ポリウレタン32%です。極細のポリエステル繊維をポリウレタンで結合し、表面を起毛させることで、天然スエードに似たなめらかな手触りとマットな見た目を実現しています。

「アルカンターラ」はアルカンターラ社の登録商標です。レクサスの取扱説明書にも「“アルカンターラ®”は Alcantara S.p.A. の商標です」と明記されており、素材の一般名称ではなく特定の会社の製品名にあたります。同社は生産を「100% Made in Italy」と位置づけ、本社はミラノ、工場はテルニ県ネラ・モントロにあります。

東レとの関係

アルカンターラ社は東レが70%を出資するグループ会社で、素材は1970年に日本人科学者の岡本三宜氏が発明し、1972年にイタリアの ENI グループと東レの合弁で会社が生まれました(同社公式沿革)。東レ自身も極細繊維の技術でスエード調人工皮革「ウルトラスエード」を日本で生産しており、両者の歴史と組成の違いは姉妹記事「https://www.starex-solutions.jp/archives/14126」で表にしています。

本革・スエードとの違い

最大の違いは、原料が動物の皮かどうかです。本革は動物の皮をなめした天然素材で、スエードはその一種です。タンナー(皮革製造業者)の株式会社山陽によれば、スエードは「革の裏面(床面)をサンドペーパーで毛羽立たせ、ベルベット状に起毛させて仕上げた革」で、子牛・子羊・山羊などの皮からつくられます。つまりスエードは「天然皮革の起毛仕上げ」、アルカンターラは「化学繊維でスエードの構造を再現した人工素材」です。

原料が違えば、水への反応、汚れの落とし方、経年変化の出方も変わります。

項目アルカンターラ本革(銀面仕上げ)スエード(天然起毛革)
原料ポリエステル68%・ポリウレタン32%(人工素材)動物の皮(牛など)をなめした天然素材動物の皮の裏面(床面)を起毛させた天然素材
表面極細繊維を起毛させたマットな表面表皮(銀面)を残したなめらかな表面。塗装仕上げが一般的毛足の短い起毛。キメの細かさは原皮による
個体差工業製品のため均質傷・シワ・血筋など天然の個体差がある天然の個体差がある
水拭き可(固く絞った布)少量のみ濡れシミに注意
主な劣化毛羽の乱れ・寝てテカる・白っぽい汚れひび割れ・表面塗膜のはがれ・色落ち毛羽の摩耗・シミ・色抜け
商標アルカンターラ社の登録商標(ブランド名)一般名称一般名称

なお、本革の中でも「ナッパレザー」と呼ばれる柔らかい革については、ナッパレザーとは|本革・セミアニリンとの違いで詳しく解説しています。ヌバック(銀面側を起毛させた革)とスエードの違いは「https://www.starex-solutions.jp/archives/14127」をご覧ください。

アルカンターラ調マイクロファイバー素材の起毛表面の拡大
起毛した極細繊維の表面。指でなでると跡が残り、向きで色味が変わって見える

アルカンターラの採用が多い車種の傾向

アルカンターラ社の公式サイトでは、自動車向けの用途として「シート、ダッシュボード、ルーフ(天井)、ドアパネル、ステアリングホイールとコラム」が挙げられています。実車では、シート全面よりも、座面・背もたれの中央部、ステアリングのグリップ、天井、ピラーなど「手や体が直接触れる部分」への部分使いが目立ちます。

国内メーカーの公式資料では、日産の GT-R とノート NISMO の取扱説明書にアルカンターラ製ステアリングの手入れ方法が、レクサス LC の取扱説明書に「人工皮革(アルカンターラ®)の手入れ」の項目があります。いずれもスポーツグレードや上級モデルで、しっかり握る・体を支える部位に使われている点が共通しています。

採用が多い理由は、公式サイトが挙げる「グリップ」「軽量」「通気性」「夏に涼しく冬に暖かい温度感」という実用面と、マットな質感が高級感の演出に向く点にあると考えられます。ただし「スエード調」と案内されている素材が必ずしもアルカンターラとは限りません。自分の車の素材名は、カタログや取扱説明書の「内装」「お手入れ」の項目で確認するのが確実です。

アルカンターラの手入れ

アルカンターラは人工素材で、公式にも水拭きが案内されています。ただし表面は極細繊維の起毛なので、「強くこすらない」「溶剤や熱を使わない」「毛並みを整える」の3点が大原則です。アルカンターラ社の公式ケアガイドと日産・レクサスの取扱説明書に共通する手順をまとめます。

日常の手入れ(ブラッシングと乾拭き)

アルカンターラ社は日常の手入れとして「柔らかいブラシ、乾いた布、または掃除機でほこりを取る」ことを案内しています。砂ぼこりや衣類の繊維は放置すると皮脂と混ざって白っぽい汚れになるため、洋服用のエチケットブラシで毛並みに沿って払い、掃除機の弱モードで吸い取るだけでも清潔さが保てます。

定期の手入れ(ぬるま湯で固く絞った布)

日産の GT-R・ノート NISMO の取扱説明書は「柔らかいきれいな布をぬるま湯(約40℃)に浸して、固くしぼり」、白っぽくなった部分を「ぬらしながら、軽くたたいて汚れを落とし」、乾いたら「柔らかいブラシなどで軽くブラッシングし、毛並みを揃える」手順を示し、「1か月に1回程度」の定期実施をすすめています。レクサス LC の取扱説明書も同じく40℃程度のぬるま湯で固く絞った布を使い、「毛羽が強く乱れないように」ふき取り、乾いたらエチケットブラシで毛並みを整える手順で、メーカー間でほぼ一致しています。

  • 布は白い綿布など、色落ちしないきれいなものを使う
  • 布はびしょ濡れにせず「固く絞る」
  • こすらず「たたく」。汚れは外側から内側へ(レクサス・アルカンターラ社共通)
  • 一度拭いた布はすすいでから再使用し、常にきれいな面を使う
  • 完全に乾いてから、柔らかいブラシで毛並みを整える

こぼした・固着した汚れの応急処置

飲み物をこぼした:レクサスの取扱説明書は「ティッシュペーパーなどを軽くあてて吸い取る」よう案内しています。アルカンターラ社のシミ抜きガイドでも「30分以内に対処」「クリーナーを直接注がない」「こすらない」が原則で、血液や尿は温水で固まるため冷水を使うとされています。

乾いて固着した泥やコーヒー:「エチケットブラシなどで軽くブラッシングして取り除き、その後掃除機で吸い取る」のがレクサスの案内です。落ちない場合は、前述のぬるま湯で固く絞った布で外側から内側へたたきます。

油性の汚れ:取扱説明書に薬剤を使う方法が載っている車種もありますが、変色のリスクがあるため、本記事では手順として勧めません。記載がある場合もその指示どおりに、目立たない場所で試してからにしてください。迷ったら自己判断せず専門店へ。応急処置全般は「https://www.starex-solutions.jp/archives/14129」にまとめています。

やってはいけないこと

  • 強くこする・爪を立てる・手でこする(レクサス:表面の劣化や損傷の原因。日産:傷や変色の原因)
  • スチームを直接当てる、漂白剤、アセトンなどの強い溶剤、アイロンなどの高熱(アルカンターラ社が明示的に禁止)
  • 粘着力の強いテープでほこりを取る(レクサス:植毛がはがれるおそれ)
  • 柄入りの布・ペーパータオルで拭く(アルカンターラ社:インク移りのおそれ)
  • 汚れた手で触る(レクサス:ふれる頻度が高い部分は汚れが移りやすい)

毛羽立ち・テカリ・白っぽさの原因

多いトラブルは「毛羽立ち」「テカリ」「白っぽい汚れ」の3つで、いずれも起毛構造に原因があります。

毛羽立ちは、極細繊維が摩擦で引き出され、絡まって小さな毛玉になった状態です。衣類との擦れ、爪、粘着テープ、硬いブラシが主な原因で、レクサスの取扱説明書が「爪を立てない」「粘着力の強いテープを使わない」と注意しているのはこのためです。軽い乱れなら柔らかいブラシで戻りますが、繊維が切れて毛玉になった部分は元に戻せません。

テカリは、起毛していた繊維が一方向に寝て、光を均一に反射するようになった状態です。ステアリングの握り位置や乗り降りで擦れる部分に出やすく、そこに皮脂や整髪料、ハンドクリームが染み込むと繊維同士が固まって、さらに平らに寝てしまいます。これが「使い込むと黒光りする」原因と考えられます。皮脂が固まる前なら、ぬるま湯で固く絞った布でたたき洗いしてブラッシングすれば、起毛はある程度立ち上がります。

白っぽさは、日産の取扱説明書が「汚れた(白っぽくなった)部分」と表現しているとおり、皮脂・汗・ほこりが繊維の表面に薄く付着した状態と考えられます。放置すると落ちにくくなるため、月1回程度の水拭きで蓄積を防ぐのが効果的です。

Starex 水性シートコーティングとの関係

起毛素材のアルカンターラについては先に断っておくと、施工できるかどうかをこの記事では断定しません(下のよくある質問にまとめています)。そのうえで Starex(スタレックス)とは、水性タイプのシートコーティングです。本革・合皮・ファブリックなど車のシートの表面に透明な保護層をつくり、色移り・汚れ・皮脂・整髪料などからシートを守ります。素材の質感を損なわない設計思想で、施工は本部認定の技術講習を受けた認定施工店のみが行います。

相談先は認定施工店一覧から選べます。水性と油性の違いは水性 vs 油性の比較で解説しています。

よくある質問

アルカンターラは本革ですか?

いいえ、本革ではありません。アルカンターラ社の公式情報ではポリエステル68%・ポリウレタン32%の人工素材で、動物の皮は使われていません。スエードに似た質感から「スエード調」と呼ばれますが、原料も構造も異なります。

アルカンターラは水拭きしても大丈夫ですか?

はい。固く絞った布での水拭きは、アルカンターラ社・日産・レクサスの公式案内に共通しています。40℃程度のぬるま湯、固く絞る、こすらず軽くたたく、乾いたら柔らかいブラシで毛並みを整える、の4点を守り、スチームや漂白剤、強い溶剤は避けてください。

アルカンターラのテカリは直せますか?

皮脂で繊維が寝ている段階なら、ぬるま湯で固く絞った布でたたき洗いし、乾燥後に柔らかいブラシで毛並みを起こすと改善が見込めます。摩擦で繊維自体が摩耗している場合は戻りません。改善しないときは内装クリーニングの専門店に相談してください。

アルカンターラに Starex は施工できますか?

起毛素材への施工は素材によって適否が異なるため、この記事では可否を断定しません。素材名を伝えたうえで、Starex 認定施工店に現車を見てもらうのが早道です。

【本記事の参考ソース】Alcantara S.p.A. 公式サイト「Material」(https://www.alcantara.com/en/material/)/同「Corporate – Company, Brand and History」(https://www.alcantara.com/corporate/)/同「Cleaning & Maintenance」(https://www.alcantara.com/cleaning-maintenance/)/同「How do I clean Alcantara?」(https://www.alcantara.com/cleaning-maintenance/how-clean-alcantara/)/同「Stain Removal」(https://www.alcantara.com/cleaning-maintenance/stain-removal/)/同「Automotive Colour Charts」(https://www.alcantara.com/colors/automotive-colour-charts/)/東レ欧州法人「Alcantara S.p.A. | Toray Group in Europe」(https://www.toray.eu/europe/network/alcantara/)/東レ「ウルトラスエード® Design & Technologies」(https://www.ultrasuede.toray/about/design_technologies/)/日産自動車 GT-R 取扱説明書「アルカンターラ®ステアリングのお手入れ」(https://www.nissan.co.jp/OPTIONAL-PARTS/NAVIOM/GT-R_SPECIAL/1808/PG/guid-89aef41b-a609-4e1b-a938-5d0f6ac1b8be.html)/日産自動車 ノート e-POWER NISMO 取扱説明書「アルカンターラ®ステアリングのお手入れ」(https://www.nissan.co.jp/OPTIONAL-PARTS/NAVIOM/NOTE_SPECIAL/E-POWER/1809/PG/guid-dfb464cc-108b-43d7-9872-fce83c9df42a.html)/レクサス LC 取扱説明書「人工皮革(アルカンターラ®)の手入れ」(https://manual.lexus.jp/lc/2306/cv/ja_JP/contents/vhch06se010403.php)/株式会社山陽(タンナー)「起毛革① 〜スエード革とは〜」(https://sanyotan.co.jp/note/brushedleather_01)

株式会社 and CLEA

〒861-8034
熊本県熊本市東区八反田 1-3-78

Tel. 096-223-5536

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