ウルトラスエードを使ったスエード調の車内内装

ウルトラスエードとは|アルカンターラとの違いと手入れ

ウルトラスエードは、東レが開発した極細繊維とポリウレタンからなるスエード調の人工皮革です。ただし「人工皮革」と言っても合皮のように表面をコーティングした素材ではなく、起毛した繊維そのものが表面に出ているため、本革と同じ感覚で扱うと毛羽を傷めてしまうことがあります。この記事では、正体と、アルカンターラ・本革スエードとの違い、車での採用例、手入れとNGを整理します。

結論だけ先に言うと、手入れは「40℃程度のぬるま湯で固く絞った布で拭き、乾いたらやわらかいブラシで毛並みを整える」の2ステップで足ります。強くこする、熱を当てる、洗剤の原液を使う、の3つだけ避けてください。

この記事のポイント

  • ① ウルトラスエードは東レの登録商標で、ポリエステル80%・ポリウレタン20%の人工皮革(東レ公式・一部品番は75/25%)
  • ② アルカンターラは東レ70%出資のイタリア製別ブランド。組成は68/32%で本記事の80/20%と違う
  • ③ 手入れの基本は「ぬるま湯で固く絞った布」と「ブラッシング」。強くこする・熱を当てる・洗剤の原液はNG

ウルトラスエードとは|東レの人工皮革

ウルトラスエード(Ultrasuede®)は、東レ株式会社の登録商標で、同社が1970年に世に出したスエード調の人工皮革です。東レ公式サイトでは「1970年のデビュー以来」と紹介されており、GAZOO の東レ取材記事によれば、日本国内では同じ素材が長らく「エクセーヌ」の名で販売されてきました。

組成は東レ・ウルトラスエード・マーケティング株式会社の製品ページに、自動車用を含む多くの品番で「ポリエステル80%、ポリウレタン20%」と明記されています(一部品番は75%/25%)。東レの技術ページによると、内部は超極細繊維の束とポリウレタンが絡み合う構造です。この極細繊維は「全長900kmの重さが1gにも満たない」細さと説明されており、これがなめらかな手触りと独特の起毛感を生んでいます。

織物や編物ではなく、繊維を絡ませた不織布を土台にした素材だと理解すると、後で出てくる手入れの注意点が腑に落ちます。

東レが挙げる特徴は、軽さ、耐久性、適度な通気性、快適な表面温度、手入れのしやすさ、発色の美しさなどです。現在のラインナップには、再生ポリエステルや植物由来原料を使った品番のほか、自動車の内装向けに燃えにくさの基準を満たした品番も用意されています。

アルカンターラとの違い|製造元とブランドが違う

結論から言うと、ウルトラスエードとアルカンターラは同じ発明を源流に持つ、製造元とブランドが異なる素材です。アルカンターラ公式サイトの会社沿革には、素材の特許は日本人科学者・岡本三宜氏(東レ)が1970年に発明したものであり、1972年にイタリアのENIグループと東レの合弁会社として設立された会社が、1981年に「Alcantara S.p.A.」と社名を変えたと記されています。同じ沿革ページによれば、2023年時点の株主構成は東レ70%・MN Inter-Fashion 30%です。

つまりアルカンターラは、東レの技術を母体にイタリアのネラ・モントロ工場で生産される、東レグループ内の別会社・別ブランドです。一方でアルカンターラ公式は組成を「ポリエステル68%・ポリウレタン32%」、100%イタリア製と説明しており、東レ公式が示すウルトラスエードの80%/20%とは配合が違います。

比較項目ウルトラスエードアルカンターラ
製造・販売東レ株式会社(日本)アルカンターラ社(イタリア・東レ70%出資)
登録商標東レの登録商標「Ultrasuede®」アルカンターラ社の登録商標「Alcantara®」
誕生1970年(東レの発明・デビュー)1972年に合弁会社設立、1981年に現社名
組成(公式表記)ポリエステル80%・ポリウレタン20%(一部75/25%)ポリエステル68%・ポリウレタン32%
生産地日本(東レ)イタリア・ネラ・モントロ工場(100% Made in Italy)
車での採用(公式)自動車用品番をラインナップ1974年ランボルギーニ・ブラーボで初採用(公式沿革)

車のカタログで「ウルトラスエード」と書かれていれば東レ製、「アルカンターラ」と書かれていればイタリアのアルカンターラ社製で、どちらも起毛タイプの人工皮革である点は共通です。アルカンターラ側の採用車種や毛羽立ち・テカリの対処は姉妹記事「https://www.starex-solutions.jp/archives/14124」にまとめています。

本革スエードとの違い|見た目は似ていても中身は別物

本革のスエードは、牛や豚などの動物の皮の裏面(銀面の反対側)をサンドペーパーで起毛させた天然皮革です。ウルトラスエードは化学繊維とポリウレタンで質感を再現した人工素材で、原料も性質も異なります。見た目は似ていても水分や熱への反応が違うため、同じ手入れ方法をそのまま流用しないことが大切です。

  • 原料:本革スエードは動物の皮、ウルトラスエードはポリエステル極細繊維+ポリウレタン
  • 水分:本革は水染みや硬化が起きやすい。ウルトラスエードは東レ公式が「ぬるま湯で固く絞った布」での拭き取りを案内している
  • 個体差:本革は一枚ごとに傷や色ムラがある。人工皮革は品質が均一
  • 共通点:どちらも毛羽が表面に出ているため、強くこするとテカリや毛羽立ちが起きる

自分の車の表皮は、主要装備一覧や取扱説明書の「お手入れ」の章で確認できます。本革スエードやヌバックの手入れは姉妹記事「https://www.starex-solutions.jp/archives/14127」で、なめらかな本革シートは「ナッパレザーとは|本革・セミアニリンとの違い」で扱っています。

ウルトラスエードの細かな起毛テクスチャの拡大
起毛した極細繊維そのものが表面になっているのがスエード調人工皮革

車のシート・ステアリングでの採用例

ウルトラスエードは、国産車ではスポーツグレードや特別仕様車のシート・ドアトリムに採用される傾向があります。公式情報で確認できる範囲では、レクサス IS・RZ の特別仕様車のスポーツシートやドアトリム、トヨタ GR86 のシートなどに設定されています(トヨタ公式ニュースルーム・レクサス公式・GR86 取扱書)。海外メーカーでは、東レのウルトラスエード公式サイトにフェラーリ 296 GTS や CUPRA とのコラボレーション事例が掲載されています。

ステアリングやシフトブーツの起毛素材は、車種によってアルカンターラなど別素材のこともあるため、カタログの表記を確認してください。起毛素材が選ばれる理由として、東レやアルカンターラの公式サイトはグリップ感、軽さ、表面温度の快適さを挙げています。その反面、皮脂や整髪料、デニムの色移りが毛羽の奥に入りやすく、こまめな手入れが求められる素材でもあります。

ウルトラスエードの手入れ方法とやってはいけないこと

手入れの基本は、東レ公式とトヨタ GR86 取扱書で一致しています。どちらも「40℃程度のぬるま湯をしみ込ませて固く絞った布で拭き、乾いたらやわらかいブラシで毛並みを整える」ことを月1回程度の定期手入れとして案内しています。

日常の手入れ(月1回程度)

  • ホコリや毛羽の付着は、エチケットブラシで軽くブラッシングして取り除く(東レ公式)
  • 全体の汚れは、40℃程度のぬるま湯を含ませて固く絞った布で、毛羽が強く乱れないように拭く
  • 乾いたら、やわらかいブラシで毛並みを一方向に整える

液体をこぼしたとき・水性の汚れ

  • まずティッシュペーパーなどを軽くあてて吸い取る。強く押さえると汚れが繊維の奥にしみ込む(GR86 取扱書)
  • 乾いてしまった汚れは、やわらかいブラシで軽くブラッシングしてから拭く
  • ぬるま湯で固く絞った布で、汚れの外側から内側へ各方向から軽く拭き取る
  • 洗剤を使うなら東レ公式のとおり洗剤1に対して水10以上で薄め、最後にきれいな濡れタオルで洗剤分を拭き取る

油性の汚れ

皮脂や整髪料、食べこぼしの油分について、東レ公式とトヨタ GR86 取扱書には溶剤(ベンジン)をしみ込ませた布で汚れの外側から内側へ叩く手順が載っています。ただしこの方法は、自分の車の取扱説明書に同じ記載がある場合に限り、換気と火気に注意したうえで目立たない場所で試してから行ってください。記載がない車種や、自信がない場合は自己判断で溶剤を使わず、専門店に相談するほうが安全です。

やってはいけないこと(NG)

  • 強くこする:東レ公式は「繰り返しこすること」を毛羽立ちや破れの原因として挙げている
  • 熱を当てる:タバコやストーブなどの高熱に近づけない。ドライヤーで急いで乾かさず自然乾燥
  • 家庭用洗剤の原液:色ムラや残留の原因になる。使うなら充分に薄める
  • 取扱説明書にない溶剤・漂白剤:シンナーなどメーカーが案内していない薬剤は使わない。市販クリーナーは目立たない場所で試す
  • 濡れたまま放置:拭いたら乾かしてブラッシングで毛並みを戻す

シートの汚れの応急処置は姉妹記事「https://www.starex-solutions.jp/archives/14129」でも素材別に整理しています。自動車メーカーの取扱説明書に「ウルトラスエードの手入れ」の項目がある場合は、そちらの記載を最優先にしてください。

Starex 水性シートコーティングとの関係

ここまでの手入れで落ちにくいのは、皮脂とデニムの色移りです。こうした汚れからシートを守ることを目的とした製品が Starex(スタレックス)です。Starex は水性タイプのシートコーティングで、本革・合皮・ファブリックなど車のシートの表面に透明な保護層をつくり、色移り・汚れ・皮脂・整髪料などからシートを守ります。施工は本部認定の技術講習を受けた認定施工店のみが行い、素材の質感を損なわない設計思想を掲げています。

ただし、ウルトラスエードやアルカンターラのような起毛素材は、表面がなめらかな本革や合皮とは構造が大きく異なります。起毛素材への施工可否は素材や状態によって適否が異なるため、この記事では「施工できる」「できない」と断定しません。ウルトラスエードのシートで検討したい方は、認定施工店一覧から近くの店舗に、車種と「ウルトラスエード」という素材名を伝えて聞いてください。水性タイプについては「水性 vs 油性の比較」をご覧ください。

よくある質問

ウルトラスエードとアルカンターラはどっちが高級ですか?

どちらが上という公式な序列はありません。両者は同じ技術から生まれた人工皮革で、ウルトラスエードは東レが日本で、アルカンターラはイタリアのアルカンターラ社(東レ70%出資)が生産する別ブランドです。組成や生産地が異なり、自動車メーカーの判断で使い分けられています。

エクセーヌとウルトラスエードは同じものですか?

同じ東レの素材です。GAZOO の東レ取材記事によれば、日本国内では長く「エクセーヌ」の名で販売され、現在は「ウルトラスエード」のブランドで展開されています。古い車のカタログで「エクセーヌ」とあれば、この記事の手入れ方法がそのまま当てはまります。

ウルトラスエードのシートは水拭きしても大丈夫ですか?

東レ公式とトヨタ GR86 の取扱書は、40℃程度のぬるま湯をしみ込ませて固く絞った布で拭く方法を案内しているので、水拭き自体は問題ありません。大切なのは「固く絞る」「毛羽が乱れないように軽く拭く」「乾いてからブラッシングする」の3点です。

【本記事の参考ソース】東レ ウルトラスエード® 公式サイト(Design & Technologies https://www.ultrasuede.toray/about/design_technologies/ / お手入れ方法 https://www.ultrasuede.toray/support/ / 洗濯できないもの https://www.ultrasuede.toray/support/cant_wash.html / 油性の汚れ https://www.ultrasuede.toray/support/oily.html)/東レ・ウルトラスエード・マーケティング Ultrasuede®ラインナップ(https://www.tum.toray/lineup/)/Alcantara S.p.A. 公式(Corporate https://www.alcantara.com/corporate/ / The Material https://www.alcantara.com/the-material/ / 50 Years https://www.alcantara.com/50-years-alcantara-history-italian-excellence/)/トヨタ GR86 取扱書「ウルトラスエードの手入れ」(https://manual.toyota.jp/toyota/gr_86/gr_86/2110/vhcv/ja/html/vhch06se010403.html)/トヨタ グローバルニュースルーム LEXUS IS 特別仕様車 2025-01-23(https://global.toyota/jp/newsroom/lexus/42111089.html)/LEXUS 公式 RZ “F SPORT Performance”(https://lexus.jp/models/rz/features/f_sport_performance/)/GAZOO 東レ取材記事「発祥は日本!? ウルトラスエードの開発会社にその歴史を聞いてみた」(https://gazoo.com/column/daily/21/03/18/)

株式会社 and CLEA

〒861-8034
熊本県熊本市東区八反田 1-3-78

Tel. 096-223-5536

上部へスクロール
💬LINEで相談 📍近くの認定店を探す 🤝加盟店募集